『僕たちのクリスマス』(6-1) (創作Love Story)







僕たちは年に一度だけ逢おうと決めていました。

今年は七夕の夜がその日でした。


彼女は僕の古くからの友人。
昔恋人だった人です。
名前を仮にユキ、としましょう。

僕は純、としておきますね。
純雪、、、と覚えやすい名前でいいでしょうから。




僕たちには事情がありました。
いつでも逢える環境ではありませんでした。

けれど僕は彼女を愛し、彼女も僕を愛していました。


僕は一生彼女を愛しますし、
彼女も僕を一生愛すると誓いました。


愛し合っていても結ばれることの無い恋でした。


僕たちは結ばれなくとも愛し合い、
生きている限り年に一度だけ逢おう、
そういう約束をし恋人としての関係を絶ったのです。

遠い昔に。




この年の夏、
僕とユキは七夕の夜にだけ恋人に戻りました。

夢のような逢瀬に浸り、思い出抱き締めて、
また来年、と互いの無事を願って別れたのです。


別れ際、新幹線のホームで僕はユキにキスをしました。

僕が人前でそんなことをすることは滅多にないのですが、
あまりにユキが切ないことを言うものですから。


「貴方だけを見つめていたいの。」
「これからも貴方だけを愛して生きて行くの。」
「貴方も変わらなく、お元気でいてね、お願い、だから、」


僕はたまらなくなって彼女を抱き締めてキスをしたのです。

「当たり前じゃないか。僕は君しか見えない。」
「君だけを愛して生きている。」
「これからも変わらなく、ずっと、ずっと、、、」

(ずっと、この命、続く限り、)


発車時刻が迫っても僕たちは離れられませんでした。




やがて。
無情の発車のベルが鳴る。

僕は無理無理ユキから身体を離しました。


ユキの目には涙が溢れていました。

その涙を見ていると、
僕も泣いてしまいたい気持ちになる。


僕はポケットから安物のサングラスを取り出して、
ユキの顔にそっと掛けました。

「それ、やるから、泣き顔、おかしいから、」

そう言いながらユキの背中を押して車内へ乗せ、
「元気でな、また、来年、」
と言いました。


ユキはこくりと頷いて何か言いたげでしたが、
その瞬間ドアが閉まって、列車は発車したのです。


今年の夏の七夕の夜。




NEXT





  




+BGM+(↓CLICK)

BGI:Copyright(C)素材散策 BGM:Copyright(C)Akurion by 灸羅 さん
2003 Xmas  Presented by  Jean-Jacques Azur